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2009年01月06日

住宅の省エネ政策が新たな段階へ

 
 悪化し続ける環境問題対策は今や全世界的な取り組みとして進めなければならない大きな課題ですが、特に深刻さを増しているのが地球温暖化。その主な原因と言われているCO2(二酸化炭素)の排出量削減は急務となっています。
 このような状況の中、国では増加し続けている一般家庭のCO2排出量削減へ向け、新たな住宅の省エネ基準を4月から施行する予定で準備を進めています。
 今回は11月下旬に発表された基準案について北海道立北方建築総合研究所環境科学部の鈴木大隆主任研究員のお話を交えて紹介します。


省エネ基準は断熱と暖冷房負荷に特化

 国が発表した基準案は、

 ①住宅省エネ基準の「建築主の判断基準」と「設計・施工の指針」の改正案
 ②品確法に基づく「住宅性能表示制度評価方法基準」の改正案
 ③新設された建売住宅業者対象の「住宅事業建築主の判断の基準案」

 いずれも政府案で、募集したパブリックコメントによって内容が変わる可能性もあります。1月に告示予定ですが本稿執筆時点(12月26日)ではまだ告示は出ていません。

 ①の住宅省エネ基準改正案については、一般に次世代省エネ基準と呼ばれている平成11年基準から各地域とも熱損失係数(Q値)に変更はなく、気密性能(相当隙間面積)、気密層施工、暖冷房、換気量などの基準が削除され、断熱性能と省エネ性能(暖冷房負荷)だけを規定する案となっています。
 
 もちろん、断熱材本来の性能を発揮させるためには壁内結露を防ぐ防湿・気密層の施工や気流止めが欠かせません。そこで壁体内結露対策に関しては②の性能表示評価方法基準案の中の省エネルギー対策等級で新たな項目が追加・拡充されています。

 ③は年間150戸以上の建売住宅を建設する住宅会社を対象とした、いわゆるトップランナー基準案で、断熱性能と設備機器の効率を総合的に評価します。2013年を目標年度とし、平成11年基準を満たす躯体に現時点での一般的な設備機器を設置した住宅と比べ、一次エネルギーで10%削減できる省エネ性能の達成状況を報告するよう定めています。もし、この水準に満たない場合、省エネ性能向上の勧告や業者名公表、罰則といった措置が取られることもあります。


住宅の断熱水準底上げを図る

 これらの基準案について鈴木大隆主任研究員は「地球環境のためには、まずすべての住宅の断熱水準をボトムアップすることが急務。その時に達成してほしい最低水準は平成11年の住宅省エネ基準であり、今回はその普及を図るための改定。そして事業主基準(トップランナー基準)は将来の住宅省エネ基準の一つのひな形になっていくでしょう」と話しています。

 住宅分野での省エネ化・CO2削減を進めて行くためには、注文住宅など業界の一部だけでなく、全体の断熱水準を上げることが必要。そのためにはボトム対策として断熱化が遅れていると言われる建売住宅や賃貸アパートなど小規模な集合住宅の断熱性能をいかに上げるかがカギになります。

 そこで国交省ではボトム対策として、改正省エネ法で新たに平成22年4月から300m2以上2000m2未満の住宅・建築物にも省エネ措置の届出を義務付けることにより、平成4年基準にも及ばないと言われている本州の多くの小規模集合住宅の省エネ性能引き上げを図り、そしてさらに改正省エネ法に追加されたトップランナー基準によって、2013年度までアパートと同様に高断熱化が遅れている建売住宅の省エネ水準を高める考えです。


トップランナー基準は高水準

 なお、トップランナー基準については省エネラベリング制度で運用することも検討されています。これは家電製品でおなじみの制度で、トップランナー基準を達成しているかどうか、達成率はどのくらいかなどを表したラベルを製品に貼付する仕組みです。

 ただ、基準案のハードルは高いと言えます。基準で使われる一次エネルギー消費量は地域ごとに躯体の断熱性能と、暖冷房、給湯、照明、換気との組み合わせで計算するようになっていますが、仮に高効率設備を使わない場合、Q値は熱交換換気を含まずにⅠ・Ⅱ地域で1.4W、Ⅲ〜Ⅴ地域で1.9Wなどとなります。

 鈴木大隆主任研究員は「一次エネルギーで10%削減は決して低い目標ではなく、例えば断熱と設備の組み合わせなら平成11年の住宅省エネ基準(等級4)レベルの断熱とし、高効率給湯・節湯機器の導入、または地域によるが熱交換換気の導入などとなります。断熱だけでクリアしようとすれば北海道ではQ値1.4W、本州なら同1.9Wの断熱を行う必要があり、いずれにしても相当高いハードルですが、住宅の省エネ化を本当に実現していくためには、今後こういう考え方をトップランナー基準適用対象外の住宅会社にも認識してもらうことが重要になります」と語っています。

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(鈴木大隆主任研究員)

鈴木大隆氏プロフィール
北海道立北方建築総合研究所居住科学部主任研究員・工博
1958年生まれ。1984年室蘭工業大学大学院修士課程修了、1984〜1992年同大学工学部建築工学科助手、1992〜2002年北海道立寒地住宅都市研究所、2002年〜北海道立北方建築総合研究所。


トップランナー基準案の一次エネ消費算定の考え方
(住宅事業建築主の判断の基準案(トップランナー基準案)の一次エネ消費算定の考え方)


(※本記事は(株)北海道住宅新聞社との委託契約に基づき同社が作成しました。)