平成20年度の受賞作品が決定しました!!
みなさま大変お待たせいたしました。
ついに、今年度の受賞作品が以下の通り決定しました。
【北海道赤レンガ建築賞】
北見信用金庫本店
【北海道赤レンガ建築奨励賞】
小さな老人ホーム「かざぐるま」
11月4日~5日の現地審査の後、11月10日に最終審査を実施し受賞作品を決定しました。その後、実行委員会の報告などを経て結果発表ということになりました。
各作品についての大矢審査委員長による「講評」を下の“続きを読む”に掲載しますので是非ご覧下さい。
また今後は、2月初めに表彰式を予定しています。表彰式の模様についてもこのブログでご紹介していきたいと考えておりますのでお楽しみに。
《審査講評》
北海道赤レンガ建築賞「北見信用金庫本店」
道東の北見市は平成18年に隣接する端野、常呂、留辺蘂3町と合併、人口は約13万人、面積では北海道で最も大きなマチとなった。しかし、道内の他都市と同様、近年、ここでも中心市街地の活力低下傾向は否めず、その対策として、現在、JR北見駅周辺に各種都市機能をコンパクトに集約する新たな都心核の形成に努めている。
北見信用金庫は、昭和5年に創業、本店の他、道東に21の支店をもつ地域の中核的金融機関であるが、受賞対象となった本店は、市街地活性化事業の先駆けともいえる施設として、平成18年秋、北見駅の北側、中央大通と国道39号線が交差する角地に竣工した。鉄骨造地上10階地下1階建て、延べ面積9,000㎡を超えるまとまりあるボリュームは、駅前広場からその全容を望むことができるが、ファサードに設えられたLED発光による演色装置と相まって、昼夜を分かたず街のランドマークとなっている。
南東・南西向きのビル壁面に採用したダブルスキンは、手法として特に目新しいものではないが、北見地方の日照率の高さを活かしたその設置効果には著しいものがある。2枚のガラス壁に囲まれた中空部分が、自然換気を促す風洞、太陽光の拡散、あるいは、視線や騒音を調整するバッファーとして多様な役割を果たし、内部に明るく清潔感のある執務空間を生み出している。更に、壁面に設置した建材一体型太陽光発電パネルが年間38,000kwhを超す電力を生成、その利用によりファサードの演色装置を駆動させるアイディアも、地域の環境特性を活かした建築手法として相応しいものだ。
また、中央大通りから壁面をセットバックさせ、歩行者通路やバス待合スペースを提供したこと、広めの現金自動預払機(ATM)設置空間にギャラリー機能を付加したことなど、顧客だけではなく一般市民に対するきめ細やかな建築計画的配慮も見られる。
業務の性格上、一般にこの種の施設はとかく閉鎖的になりがちだが、通りや街と建築との関係をしっかりと読み込み、風通し良く透明感の横溢する空間を構築し得たことが施設に対する親近感を生んでいる。また、夜間、通りに面するガラス壁面全体を明るく浮かび上がらせ、ビルそのものを「街の灯り」とする仕掛けもユニーク(ただし、数秒毎に色とパターンを変化させる現行のプログラムはやや演出過剰で、通常時は変化を抑え、時に応じて華やかさを演出する方がむしろ効果的との指摘もあった)。
総じて言えば、銀行建築のステレオタイプとは一線を画し、地域性を活かした先進的でサステナブルな建築であり、「北海道赤レンガ建築賞」に相応しい作品として評価できる。
赤レンガ建築奨励賞「小さな老人ホーム:かざぐるま」」
北海道における人口の高齢化は全国平均を上回り、平成20年3月の統計では高齢者人口比率が23%、ほぼ4人に1人が65歳以上に達している。そうした状況下、今、高齢者福祉のあり方が、その質と量の両面で問い直されつつある。郊外立地型の広域的な高齢者福祉施設は、自然環境の豊かさや運営上の効率においてはメリットがあるものの、地域との接点が少なく、入居者が<生活の質>を維持・向上させる上で必ずしも望ましい環境とは言えない。
受賞作「かざぐるま」は、芦別市で特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人「慈恵園」が、入居者の生活・看護単位を見直し、地域がもつ介護力に期待して、芦別市の居住地域に開設した、北海道では初めてのサテライト型居住施設(小規模老人ホーム)である。
生活・看護単位を1ユニット10名とし、2ユニット即ち20名の居住を可能にする施設であるが、高齢者に対するこのような地域密着型サービスの意義をいち早く認め、その実現に取り組んだ関係者の慧眼にまず敬意を表したい。
このような施設が十分に機能を発揮する上で、入居者をきめ細かくケアする人的配置や空間的な設えは言うまでもないが、加えて、フィジカル・メンタル両面で地域に溶け込み、地域住民との間に相互理解を形成することが不可欠な条件である。その点、開設以来、近隣の人々によるボランティア活動や各種催事への参加などに施設の趣旨が予想通り生かされており、地域の人々にも快く受け入れられていることが実感できる。
建築の平面は、中央から3つのウイングが敷地を3分する形で延びており、ウイングの1つに管理部門、他の2つに20の個室が収められている。要の位置にあるリビングルームからは3つのウイングが見通せ、スタッフによる「見守り」に配慮する一方、居室のウイングでは4~6室毎にサブリビングを設け、入居者にまとまりのある落ち着いた生活空間を提供するなど、パブリックな空間と私的な領域の結合と分離が適切なスケールで統御されている。ほぼ全ての個室に大小2つの窓を設けたこと、トイレ、ミニキッチンのほか、私的な家具の持ち込み場所を用意したことなどにも、計画の基本項目における設計者の行き届いた心遣いが認められる。建築の外観は、周辺環境とのコンテクストを尊重し、抑制した形態と色彩が街並みに溶け込んでいる。
デザインを洗練させる余地がなおいくつか見られるとはいえ、多くの計画条件が絡み合う前例のないプログラムの中で、明快で望ましい建築的形態を提示し得た点は大いに評価されてよい。ここに赤レンガ建築奨励賞を贈り、今後の展開に期待したい。
(北海道赤レンガ建築賞審査委員長 大矢二郎)