赤レンガ建築賞と同奨励賞の受賞作品がついに決定しました!!
表彰式は1月26日(金)に道庁で行い、賞状と銘板(赤レンガ建築賞のみ)が贈られます。
【赤レンガ建築賞】
情緒障害児短期治療施設
建築主:社会福祉法人タラプ
設計者:藤本壮介建築設計事務所
施工者:清水建設㈱北海道支店
【北海道赤レンガ建築奨励賞】
レンガの館及び一連施設
建築主:JR琴似駅北口地区市街地再開発組合
設計者:ドーコン・建邑社共同企業体
施工者:㈱奥村組札幌支店
<選考理由>
1) 北海道赤レンガ建築賞「情緒障害児短期治療施設」
伊達市の郊外、遠くに太平洋を望む丘の上に建つこの建築は、様々な理由で心に負担を負う子供たちが共同生活を営みながら心身の健康を回復するための治療施設で、小学生から高校生まで最大50名を受け入れることができる。厚生労働省は同様の施設を各都道府県に漸次整備してゆく方針をもっており、本施設は北海道におけるその最初の事例となる。
一人ひとり年齢や事情の異なる子供たちが、子供同士、あるいはケアをするスタッフとの間に適度な「距離」をとりつつ共に暮らすという生活像はにわかには捉えにくく、又、そのために如何なる空間が相応しいかに答えることも難しい。ここで設計者は、大舎型、小舎型といった従来からの建築類型に安易に頼ることなく、両者の長所を生かすべく新しいタイプの施設づくりに取り組んだ。
50名の定員を3グループに分け、グループ毎に親密なスケールのリビングスペースを与える。そのリビングは、子供の個室やスタッフルームなどに使われる6.3メートル四方の鉄筋コンクリート製の箱5~6個が囲むことにより生み出されるのであるが、この3グループがスタッフルームを扇の要にして配置される。分散する均一空間をグルーピングにより序列化することで、大舎型の効率性と小舎型の親密感を同時に獲得できている。様々な機能を単一寸法の箱に担わせる徹底した計画方針と、それらを一見ランダムに配置することにより紡ぎだされる余白空間の多様さ。その対比がこの建築に優れた個性と魅力をもたらしている。
施設の性格上、建築主たる医師団も当初から建築のあり方に深く関わり、多くの示唆を与えた。計画プロセスを通じて建築家との密度あるコラボレーションがあって初めてこのような建築が可能になる。空間が人間の精神に深いところで影響を及ぼし得るとすれば、このような建築にこそその効果を期待したい。
建築主・設計者の意図を具体化する上で、施工者の精度の高い技術力が果たした役割も大きい。開口部の枠材を躯体にのみ込ませて内外空間の連続性を強調するなど、シンプルで切れのある空間を実現させるために払われた配慮を随所に読み取ることができる。
隣接する敷地に建つ精神障害者援護寮「ちゅに」(建築主・設計者は本作品と同じ)も平成16年度(第17回)の赤レンガ建築奨励賞を受けているが、今回の作品では、計画・設計・施工上のオリジナリティ、斬新さ、洗練度において更に一歩を進めたものと認められる。
以上の理由から、この作品を今年度の北海道赤レンガ建築賞に推すこととした。
2)北海道赤レンガ建築奨励賞「レンガの館および一連施設」
札幌市西区のJR琴似駅北口地区で実施された第一種市街地再開発事業により建てられた施設群で、約1.2ヘクタールの敷地に、地下1階・地上40階の住宅棟、鉄骨造2階建ての商業・業務棟および駐車場をもつ。
「街を繋ぐ」、「時を繋ぐ」、「人を繋ぐ」というコンセプトのもと、この地域独自のまちづくりを目指して、長期間にわたる地道な努力を継続してきた関係者の強い意志と熱意は十分賞賛に値する。特に、駅を中心にして各種施設を空中歩廊で結び、北国で生活する人々の利便性を向上させたこと、敷地内にあった昭和初期建築のレンガ造建物(200㎡)を改修・再生させて地域の集会所やローカルなミニFM局のスタジオとして活用したこと、地元で活動する小劇団の拠点づくりを用途地域上の制限を克服してまで支援したことなど、ハード、ソフト両面における事業展開に他にはない独自の工夫が見られる。
空中歩廊のやや閉鎖的なデザイン、局所的な賑わい不足など、プランニングからデザインに移行する過程での問題点はいくつか指摘できるが、民間主導型事業の中で、都市的要素の空間的・時間的な連続性を配慮しつつ、まちづくりに取り組む姿勢は貴重である。隣接する地区で現在進行中の再開発事業においても、このような志向性がさらに高度な展開をみせることに期待して、北海道赤レンガ建築奨励賞を送ることとした。